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光触媒ニュース

2022.06.17

1:白金ナノ粒子を一様に分散・固定した高活性光触媒を開発
空気中の様々な化学物質を高速分解・除去し、浄化性能を長期間維持

2022年6月16日
大成建設株式会社

大成建設株式会社(社長:相川善郎)は、放射線法※1を用いて二酸化チタン表面にナノサイズの白金粒子を一様に分散・固定した高活性な光触媒を開発しました。本光触媒は、空気中の様々な化学物質を高速に分解・除去するとともに、長時間にわたり浄化性能を維持でき、生産施設で発生が問題となる化学物質の排ガス処理、シックハウスガスや臭気の浄化等、幅広い用途への適用が期待されます。

光触媒を活用して空気中の化学物質を浄化する際、従来から白金等※2のナノ粒子を二酸化チタンに固定させることにより、分解性能が向上することは周知となっています。しかし、従来の方法では、ナノ粒子を一様に分散・固定させることが困難なため、所定の性能を得るためには、ナノ粒子の量を増やす必要があり、光触媒自体のコストアップにつながることが課題となっていました。
そこで当社は、この度、放射線法を用いて白金ナノ粒子を一様に分散・固定させ、上記の課題を解決する高活性な光触媒を開発しました。(写真1参照)

本光触媒の特徴は以下のとおりです。

(1)少量の白金ナノ粒子で化学物質を高速に分解・除去
多孔質の二酸化チタン粒状体に白金ナノ粒子を、従来法(含侵法)と放射線法を使いそれぞれ固定させた光触媒を用いて、クリーンルームで取り扱うイソプロピルアルコール(IPA)※3の除去性能を検証しました。その結果、放射線法で製造された光触媒は、従来法による光触媒に比べ白金ナノ粒子の量が1/10と少量でありながら約5倍の除去速度を有することを確認しました。(図1参照)

(2)様々な化学物質の浄化に対応
本光触媒は様々な化学物質の分解が可能で、IPAの他、分解が困難なトルエン※4、アセトン※5、メチルエチルケトン※6も浄化できることを確認しました。

(3)高い浄化性能を長期間維持し、活性炭での吸着除去より低ランニングコストを実現
一般的な化学物質の処理に使用される活性炭による吸着除去※7と本光触媒にそれぞれ所定濃度のIPAを連続的に通気※8させ、浄化性能を比較しました。(写真2参照)その結果、本光触媒の場合、運転10か月後もほぼ100%の除去率を維持できました。(図2参照)また、LCC(ライフサイクルコスト)の試算では、本光触媒はラニングコストが低く、運転4年目で交換頻度の多い活性炭を下回ることが明らかとなりました。(図3参照)

今後、当社は、本光触媒の優れた化学物質の処理性能を生かし、化学物質対策が求められる生産施設やオフィス、居住空間の空気浄化技術として更なる展開を推進してまいります。さらに、昨今、世界中で課題となっているウイルス不活化に対する本技術の有効性についても、その可能性を併せて検討する予定としています。


写真1 本光触媒(左:全体像、右:20万倍拡大画像 白い点が白金)


図1 各種光触媒のイソプロピルアルコール(IPA)除去速度


写真2 IPA連続処理試験装置


図2 IPA連続処理性能の比較


図3 活性炭とのLCC比較

※1 放射線法:
放射線照射により貴金属のナノ粒子を素材に固定する方法であり、株式会社アクト・ノンパレル(大阪大学発ベンチャー企業)の開発技術

※2 白金等:
二酸化チタンに、白金の他、パラジウム、銅などのナノ粒子を固定すると、化学物質の分解性能が向上

※3 イソプロピルアルコール(IPA):
半導体製造ラインの洗浄工程において、ウェハ洗浄装置から発生する物質で排出濃度および排出量の削減が課題となっている

※4 トルエン:
主に塗装工場等で使用され、大気汚染防止法の対象物質であり、排出基準が設定

※5 アセトン:
化学原料、高圧ガス関連、食品添加物等に利用され、有機溶媒として広く用いられる有機化合物、大気汚染防止法の対象物質であり、排出基準が設定

※6 メチルエチルケトン:
主に印刷工場等で使用され、適正管理化学物質の対象となっている

※7 吸着除去:
材料が持つ多孔質な空隙を活用し、この空隙に化学物質を吸着させて除去する方法

※8 所定濃度のIPAを連続的に通気:
濃度0.2ppmのIPAを0.62m/sの速度で、活性炭および本光触媒を通過させ、通過前後のIPA濃度を計測し、処理性能を比較

引用:大成建設株式会社>企業情報>What’s New>2022年度>白金ナノ粒子を一様に分散・固定した高活性光触媒を開発

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